御手洗の苗字がかわいそう？いじめ？みたらい読みはなぜかや由来について紹介

「御手洗（みたらい）」という苗字を聞いて、少しドキッとした経験はありませんか。

現代では「お手洗い」がトイレを指す言葉として広く使われているため、この苗字を持つ人は「かわいそう」と同情されたり、からかいの対象になったりすることがあるようですが、その本来の由来は、実はとても神聖で誇り高いものなのです。

本記事では、なぜ「御手洗」がかわいそうと言われるのか、その理由を専門的な視点から深掘りしつつ、誤解されがちな苗字の本当のルーツと歴史について、詳しく調査・紹介していきます。

御手洗の苗字がかわいそう！なぜトイレ？由来についても

「御手洗」という苗字は、全国におよそ5,200人から6,000人ほどいらっしゃると言われ、決してありふれた苗字ではありません。

そのため、自己紹介のたびに「珍しい苗字ですね」と言われることも多いようですが、その珍しさ以上に、現代の言葉の意味とのギャップが、この苗字を持つ人々にとって複雑な状況を生み出していると考えられます。

ここでは、なぜ「かわいそう」と言われてしまうのか、その理由と、本来の素晴らしい由来について見ていきましょう。

現代語の「おてあらい＝トイレ」という認識が社会に広く浸透してしまっているため

「御手洗」という苗字が「かわいそう」と言われる最大の理由は、現代の日本社会において「御手洗（おてあらい）」という言葉が、ほぼ完全に「トイレ」を指す丁寧な表現として定着してしまっているためです。

私たちは日常生活の中で、駅やデパート、レストランなどで「お手洗い」という案内表示を当たり前のように目にします。

この言葉は、用を足した後に手を洗う場所、という本来の機能から転じて、衛生施設全体を指す婉曲的な表現として広く受け入れられているのです。

この社会的な共通認識が、そのまま「御手洗（みたらい）」という苗字への第一印象に直結してしまいます。

言葉の響きや意味に敏感な子供時代には、この苗字がからかいの対象になりやすいという現実があるようで、インターネットの掲示板などを見ても、「御手洗さんは学校でいじめられそう」「自分の子供がこの苗字だったらかわいそう」といった同情や心配の声が数多く見受けられます。

実際に、学校を転校するたびに苗字のことでいじめに遭い、コンプレックスを抱えてしまったという切実な悩みも語られています。

この問題は子供時代に限らず、大人になってからも、結婚を考える相手の苗字が「御手洗」であることに抵抗を感じてしまうという悩みも存在します。

本来の「みたらい」という読み方や、その神聖な由来を知っていても、多くの人がまず「トイレ」を連想してしまうという現実が、この苗字を持つ人々にとって大きな精神的負担となっているのです。

誤解されがちなため

もう一つの理由は、この苗字が持つ本来の神聖で誇り高い由来が、残念ながら一般的にはほとんど知られていないためです。

前述の通り、「御手洗」の語源は神社仏閣に参拝する前に心身を清めるための場所、「手水（ちょうず）」や「御手洗場（みたらしどころ）」にあり、伊勢神宮の五十鈴川のように、清らかな川そのものが御手洗の役割を果たすこともありました。

つまり、この苗字は神に仕える人々や、そうした神聖な場所の近くに住んでいた人々に由来する、非常に由緒正しいものなのです。

しかし、こうした背景を知らない人から「トイレと関係あるの？」といった無邪気な、あるいは無神経な質問を投げかけられる場面は少なくないでしょう。

そのたびに、御手洗さんは「いえ、実は神社の清めの場所が由来で…」と、一から説明しなければなりません。

一度や二度ならまだしも、自己紹介をするたびにこのやり取りが繰り返されると想像すると、その精神的な負担は計り知れないものがあると考えられます。

もちろん、中には自分の苗字の由来を尋ねられた際に、その誇らしい歴史を語ることを楽しんでいる方もいらっしゃいます。

しかし、「珍しい苗字ですね」という言葉が、必ずしも好意的に受け取られるとは限らず、悪意のない興味本位の質問であっても、当事者にとっては「またか」という辟易した気持ちや、弁護しなければならないという手間を強いられる状況なのです。

ビジネスの場などでは、相手に余計な気を遣わせないように、あえて由来に触れないこともあるかもしれません。

本来は誇りであるはずのルーツが、かえってコミュニケーション上の障壁や精神的な負担になってしまうという逆説的な状況が、「かわいそう」という同情を生む一因となっているのです。

なぜトイレ？御手洗の苗字の由来やルーツは？

実は、「御手洗」という苗字の起源は一つではなく、日本各地の歴史や文化と深く結びついた、複数のルーツが存在。

その多くは、多くの人が連想する「トイレ」とは全く関係のない、神聖な場所や由緒ある地名に由来しています。

「御手洗」という言葉の本来の意味は、前述の通り「神仏を拝む前に、参拝者が手を清め、口をすすぐための場所」を指し、伊勢神宮の五十鈴川や、鹿島神宮の御手洗池などがその代表例です。

そして、この神聖な場所や、その役割を担っていた川（御手洗川）などが地名となり、やがてそこに住む人々の苗字となっていったのです。

特に有名なのが、瀬戸内海に浮かぶ大崎下島（現在の広島県呉市豊町）の「御手洗」地区で、この地は江戸時代、西廻り航路が確立されると、風や潮の流れを待つ「風待ち・潮待ち」の港として、北前船などが寄港する重要な中継貿易の拠点として大変栄えました。

九州や四国の大名が参勤交代で瀬戸内海航路を利用する際にも、この御手洗湊が使われた記録が残っています。

この歴史的な港町「御手洗」が、苗字の大きなルーツの一つとなっているのです。

このため、現在でも「御手洗」姓は、この瀬戸内海航路と関わりの深い地域に多く分布しています。

最も多いのが大分県で、全国の御手洗さんのおよそ4人に1人が大分県民とも言われるほどで、特に佐伯市には約780人が集中しています。

次いで福岡県、山口県、愛媛県、長崎県など、九州の東岸から瀬戸内海沿岸にかけて多く見られるのが特徴です。

御手洗姓のルーツを辿ると、神聖な信仰の場や、日本の海上交通の歴史を支えた活気ある港町の情景が浮かび上がってきますし、決して「トイレ」などではなく、日本の文化や歴史と深く結びついた、誇り高い苗字なのです。

Q&A

ここでは、「御手洗」という苗字に関するよくある質問から、少しマニアックな疑問まで、Q&A形式でお答えします。

「御手洗」さんは全国にどれくらいいるのですか？ やはり珍しい苗字なのでしょうか？

比較的珍しい苗字と言えるでしょう。「名字由来net」によると、全国の「御手洗」さんの人数はおよそ5,200人で、全国順位は2,612位とされています。別の調査では約5,700人や約6,000人というデータもあり、日本の総人口から考えると希少な部類に入ります。
ただし、その分布には大きな地域差があるのが特徴です。最も多いのは大分県で約1,300人～1,600人、次いで福岡県、山口県、東京都、長崎県と続きます。特に大分県佐伯市には約780人が集中しており、この地域では決して珍しい苗字ではありません。このように、特定の地域に集中しているのも「御手洗」姓の面白いところです。

読み方は「みたらい」だけですか？ 「みたらし」と読む人もいると聞きました。

大多数の方が「みたらい」と読みますが、「みたらし」と読む方も少数ながらいらっしゃいます。他にも「みたあらい」「みてらい」「おてあらい」など、様々な読み方が記録されていますが、これらは非常に稀なケースと考えられます。
面白いことに、地名や神社の祭りなどでは「みたらし」という読み方が一般的です。例えば、京都の下鴨神社で行われる「御手洗祭（みたらしまつり）」や、その境内の「みたらし池」から生まれたとされる「みたらし団子」などが有名です。苗字では「みたらい」、地名や団子では「みたらし」と、同じ漢字でも使われる場面によって読み方が変わるというのは、日本語の奥深さを感じさせますね。

御手洗姓のルーツは、広島の港町だけではないと聞きましたが、他にどんな起源があるのですか？

「御手洗」という苗字のルーツは一つではなく、日本各地に複数の起源が存在します。主なものをいくつかご紹介します。

1. 広島県呉市豊町御手洗 発祥説：最も有名で、多くの御手洗さんのルーツとされるのが、江戸時代に港町として栄えたこの地です。
2. 山梨県笛吹市 発祥説：一宮町にある浅間神社の西側を流れる「御手洗川（みたらしがわ）」から発祥したという説です。川の名前がそのまま苗字になったパターンですね。
3. 静岡県浜松市 創賜説：1573年の三方ヶ原の戦いの直前、徳川家康が立ち寄って用を足し、井戸で手を洗った記念に、その地の者に「御手洗」の姓を与えた、という伝説が残っています。
4. 筑前御手洗氏：福岡県周辺の筑前国で、玄界灘の水軍を率いた清原氏を起源とする一族も「御手洗」を名乗ったと伝えられています。

このように、港町、川、武将からの下賜、古代氏族など、実に多様なルーツが存在するのが「御手洗」という苗字の大きな特徴であり、歴史的な魅力と言えるでしょう。ご自身のルーツがどこにあるのかを調べてみるのも面白いかもしれませんね。