「徳洲会のインスタが炎上した」という言葉を目にして、どの病院の、どのアカウントの話なのか分からず戸惑った方も多いのではないでしょうか。
結論から整理すると、2026年春に表面化したのは、武蔵野徳洲会病院が公表した職員のSNS投稿と、湘南藤沢徳洲会病院で起きた来院者の撮影トラブルという、別々の出来事でした。
公表資料をもとに、順を追って解説します。
徳洲会のインスタが炎上?誤解?

結論から言うと、炎上したのは公式アカウントではなく、職員個人の投稿と来院者の無断撮影です。
病院撮影禁止無視の女性動画に看護師が激怒投稿 医療現場のストレス露呈
湘南藤沢徳洲会病院の待合室で撮影禁止を破った女性患者の動画がXで拡散され、現役看護師の那須乃りん氏が「2度と病院にかかるな出ていけ」と投稿し2万超のいいねを集めた。女性はTikTokで知られる久米志佳さん(37)と特定され、アルコール依存やDV被害による精神疾患の可能性が指摘されている。一方、医療現場からは「精神科では日常茶飯事」「薄給で対応に追われる」との不満が噴出し、警察介入や出禁を求める声が相次いだが、病院の義務の限界も課題だ。
(引用:X)
| 時期 | 何が起きたか |
|---|---|
| 2025年1月頃 | 武蔵野徳洲会病院の職員が、患者48名の氏名が映り込んだ動画をSNSに投稿 |
| 2026年3月23日 | 佐田病院・福岡山王病院が、看護師によるカルテ画像の投稿を相次いで公表 |
| 2026年4月4日 | 武蔵野徳洲会病院が「当院職員によるSNSへの不適切な投稿について」第一報を公表。院内職員からの報告で発覚 |
| 2026年4月5日 | 同院が第二報を公表 |
| 2026年4月上旬 | 湘南藤沢徳洲会病院の待合付近で撮影禁止を無視した来院者の動画が拡散し、別途話題に |
| 2026年4月16日 | 芳野病院が、2025年1月頃の院内撮影写真に関する事案を公表 |
| 2026年4月22日 | セキュリティ専門メディアが武蔵野徳洲会病院の件を報道 |
| 2026年4月28日 | 同院が第三報を公表。48名への連絡・謝罪と全職員636名の研修完了を報告 |
SNSでは次の声が目立ちました(要約)。
- 公式アカウントが燃えたのかと思ったら、職員個人の投稿だった、という戸惑いの声
- 48名の氏名が1年以上も表に出ていたことへの不安の声
- 院内の職員が報告して発覚したのなら、その部分は評価してよいのでは、という声
- 撮影禁止を無視した来院者側の問題と、職員の投稿の問題が混ざっている、という指摘
- 看護師側の強い言い返しについて、気持ちは分かるが公の場で書くべきではない、という賛否
筆者も当初は混同していました。
次のようなものが理由として考えられます。
炎上理由として考えられるもの1:患者48名の氏名が、約15か月にわたり気づかれないまま公開され続けていたため

武蔵野徳洲会病院(東京都西東京市向台町)が2026年4月4日に公表した第一報によると、投稿されたのは同院の職員が撮影した動画で、その映像の中に患者48名の氏名が含まれていました。
撮影・投稿が行われたのは2025年1月頃とされ、発覚したのは2026年4月4日、院内の職員からの報告がきっかけです。
つまり、患者本人が知らないところで氏名が公開され続けた期間が、約15か月にわたっていたことになります。
医療機関にとって、この「時間」は単なる長さの問題ではありません。

個人情報保護法では、要配慮個人情報が含まれる漏えいは1人分であっても個人情報保護委員会への報告対象とされ、速報はおおむね3〜5日以内、確報は原則30日以内と期限が定められています。
病院に通院・入院しているという事実と結びついた氏名は、病歴を推知させうる情報として慎重な扱いが求められる領域です。
48名という人数以上に、「気づけなかった15か月」そのものが重く受け止められたと考えられます。
| 論点 | 法令・ガイドライン上の考え方 | 本件で公表されている内容 |
|---|---|---|
| 報告の要否 | 要配慮個人情報を含む漏えいは1人分でも報告対象 | 患者48名の氏名が動画に含まれていた |
| 速報の期限 | 事態を知ってからおおむね3〜5日以内 | 4月4日の発覚当日に第一報を公表 |
| 確報の期限 | 原則30日以内 | 4月28日に第三報として調査結果を公表 |
| 本人への通知 | 同じ類型では本人通知も必要 | 対象48名への個別連絡と謝罪を完了 |
| 従業者の監督 | 安全管理措置として実施が必要 | 非常勤・派遣を含む全職員636名の研修受講を完了 |
| 委員会への報告 | 所定の様式で提出 | 個人情報保護委員会への報告を完了 |
出典:個人情報保護委員会「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/iryoukaigo_guidance/)
同じ「時間差での発覚」は、北九州市若松区の芳野病院でも起きています。

同院が2026年4月16日に公表した内容によれば、看護師が2025年1月頃に院内で撮影・加工した写真を個人のInstagramに非公開で投稿し、その内容が別のSNS上で取り上げられたことで判明しました。
投稿時点では誰も問題視せず、1年以上たってから外部の目に触れる——この構図は、決して武蔵野徳洲会病院だけのものではないのです。
個人的には、48名という数字よりも「内部の職員が声を上げるまで誰も気づけなかった」という一点に、いちばん背筋が寒くなりました。
炎上理由として考えられるもの2:「徳洲会のインスタ」という一つの言葉に、別々の三つの出来事が重ねて受け取られたため

ここが、多くの記事であまり触れられていない部分です。
2026年4月、「徳洲会」と「インスタ」を結びつけて語られた話題は、実は主体も場所も性質も異なる三つの出来事が同時期に走っていました。
一つ目は、武蔵野徳洲会病院の職員による動画投稿です。
ここで見落とされがちなのが、同院の公表文では投稿先のプラットフォーム名が明かされていない点です。
「SNSへの不適切な投稿」とだけ記されており、Instagramだったとは公表されていません。
二つ目は、湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県藤沢市)で2026年4月上旬に拡散した、来院者による無断撮影の動画です。
これは病院側が起こしたことではなく、撮影禁止のルールを無視した来院者側の行為であり、さらに看護師を名乗る人物の強い言葉の投稿が加わって議論が広がりました。
三つ目は、徳洲会グループが実際にInstagramを積極活用しているという背景です。

グループ公式アカウントに加え、湘南藤沢徳洲会病院、東京西徳洲会病院、岸和田徳洲会病院、仙台徳洲会病院、静岡徳洲会病院、武蔵野徳洲会病院の看護部など、採用・広報目的のアカウントが各地に存在します。
医療系メディアでも、湘南藤沢徳洲会病院が運用開始から3年でフォロワー1万人を超えた事例として紹介されてきました。
「徳洲会=インスタに力を入れている法人」という前提が広く共有されていたからこそ、別件のSNSトラブルまで「インスタの話」として吸収されてしまった、という見方ができます。
| 比較項目 | 出来事A | 出来事B | 出来事C |
|---|---|---|---|
| 誰が | 武蔵野徳洲会病院の職員 | 来院した配信者と、看護師を名乗る利用者 | グループ本部と各病院の広報・看護部 |
| いつ | 2025年1月頃投稿/2026年4月4日公表 | 2026年4月上旬 | 継続的に運用中 |
| どこで | 院内で撮影した動画 | 湘南藤沢徳洲会病院の待合付近 | 各公式アカウント |
| 何が | 患者48名の氏名が映り込んだ | 撮影禁止ルールを無視した撮影と反発投稿 | 病院活動・医療健康情報・採用情報の発信 |
| どのSNSか | 病院は公表していない | 動画共有・短文投稿サービス | Instagram・Facebook・旧Twitter |
| 公式発表 | あり(第一報〜第三報) | 病院からの事案公表は確認されず | 運用規程を公開 |
なお、徳洲会グループは「公式ソーシャルメディア運用規程」を各病院サイトで公開しており、第1条で発信目的を、第2条で削除対象となる禁止事項(個人情報の侵害、誹謗中傷、なりすまし、政治・宗教活動に類する内容など)を、第3条で免責事項を、第4条で著作権の帰属を定めています。
つまり公式アカウント側は、規程に沿って運用されている状態でした。
「炎上したアカウント」と「規程を持って運用されているアカウント」が、同じ名前で語られてしまったわけです。
名前が大きい組織ほど、無関係な出来事まで一つの主語に吸い寄せられていく——調べていて、そのこわさを強く感じました。
病院自体は良い評価が多い!

では、病院そのものの評判はどうなのでしょうか。
大手の病院口コミサイトに掲載されている武蔵野徳洲会病院の口コミ15件を評価点ごとに分けると、最も多いのは4.0以上の高評価層で7件、全体の約47%を占めます。
一方で1.0台も5件(約33%)あり、平均は5点満点中2.79という二極化した形です。
同じグループの東京西徳洲会病院(東京都昭島市)は45件・平均2.94で、こちらも評価が分かれています。
| 評価帯 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 4.0〜5.0 | 7件 | 約47% |
| 3.0〜3.9 | 1件 | 約7% |
| 2.0〜2.9 | 2件 | 約13% |
| 1.0〜1.9 | 5件 | 約33% |
| 合計 | 15件 | 平均2.79 |
出典:厚生労働省「医療情報ネット(ナビイ)」武蔵野徳洲会病院の基本情報(https://www.iryou.teikyouseido.mhlw.go.jp/)
高評価側で目立つのは、次のような内容です(要約)。
- 整形外科で速やかに手術を受けられ、2週間で退院できた
- 小児科に長く通っており、喘息の治療を任せられている
- 救急の対応が速く、院内も清潔だった
- 循環器の医師が、患者と家族の双方にしっかり病状を説明してくれた
- リハビリテーションが40分しっかり行われ、自宅でできるストレッチも教えてもらえた
低評価側は「説明が足りない」「待ち時間が長い」「医師の態度が高圧的だった」といった、診療そのものより接遇やコミュニケーションに関するものが中心でした。
裏を返せば、医療の中身については肯定的な声が一定の層を占めているということでもあります。
徳洲会グループは全国で300以上の事業所を運営し、職員数は約4万人、保有する患者の診療情報は約1,400万人分、救急搬送の受け入れは全国の約3%に相当するとされています。
「生命だけは平等だ」という理念のもと、離島・へき地医療を担ってきた実績もあります。
今回の一件でグループ全体の医療が否定されたわけではない、という点は押さえておきたいところです。
数字を並べてみて、口コミの星の数だけで病院を判断するのは危ういな、と改めて思いました。
SNSの取り扱いで問題になるケースは少なくない

最後に、視野を広げてみます。
2026年3月から4月にかけて公表された医療機関のSNS関連事案は、武蔵野徳洲会病院だけではありません。
むしろ短期間に連鎖するように表面化しました。
| 公表日 | 医療機関 | 何が起きたか | 発覚の経路 | 主な対応 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年3月23日 | 佐田病院(医療法人佐田厚生会) | 看護師がSNSの限定公開機能で患者1名のカルテ画像を投稿 | SNS上の第三者の投稿から把握 | 前夜にヒアリング、当日朝に謝罪掲載、当日午後に家族へ説明 |
| 2026年3月23日 | 福岡山王病院 | 看護師が自身の受診に関する電子カルテを撮影しストーリーズに投稿 | 院内での把握 | 院内ルール・マニュアルの見直し、教育研修の強化、処分の検討 |
| 2026年4月4日 | 武蔵野徳洲会病院 | 職員の投稿動画に患者48名の氏名が含まれていた | 院内職員からの報告 | 48名への個別連絡、委員会報告、全職員636名の研修 |
| 2026年4月16日 | 芳野病院(医療法人寿芳会) | 看護師が2025年1月頃に院内で撮影・加工した写真を非公開で投稿 | 別のSNSで取り上げられ判明 | 就業規則に基づく処分、私物デバイスのルール厳格化 |
この4件を並べると、共通点がはっきり見えてきます。
- 「限定公開」「非公開」のつもりだった ——佐田病院は限定公開機能、芳野病院は非公開設定での投稿でした。閉じた場に出したはずの情報が、スクリーンショットや転載で外に出ています。
- 発覚が投稿者以外の目による ——第三者の投稿、内部職員の報告、別のSNSでの言及と、いずれも本人が申し出たわけではありません。
- 時間差がある ——武蔵野徳洲会病院と芳野病院は、いずれも2025年1月頃の投稿が2026年になって表面化しました。
- 対応の流れが似ている ——公表 → 本人・家族への連絡と謝罪 → 個人情報保護委員会への報告 → 全職員研修 → ガイドラインや私物デバイスのルール整備、という順序をたどっています。
出典:厚生労働省「厚生労働分野における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン等」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000027272.html)
医療系メディアでも、病院がSNSを始める際には施設責任者の決裁を経たうえで、対外向けの「SNS運用規程」と職員向けの「SNSガイドライン」を分けて整備すべきだと指摘されてきました。
実際、湘南藤沢徳洲会病院のSNS運用規程は、その具体例として紹介されている一つです。
規程があること自体は珍しくなくなりましたが、今回の一連の事案が示したのは、規程の有無ではなく「誰も見ていない期間をどう作らないか」という運用の問題でした。
ルールを配って終わりではなく、投稿を定期的に点検する仕組みが要るのだと感じます。